のをつくります。

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もうじき秋が来る
空がそういつた
もうじき秋が来る
山の木がそういつた。

小雨が走っていいに来た
郵便屋さんがラシャ帽子をかぶった

夜がいいに来た
もうじき秋ですよ
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 これは金井君のどうよう。及川先生が読んで下さった。金井君は畑が好きだけに、とてものんびりしていて、時時妙なことを書いては及川先生に見せています。

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天井から豆がおちて来た
ねずみのイントクブッシかな

西どなりで水の音がする
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 これも金井君のうたったもの。僕はこんなのはつくれない。

「君、いまはね、天火のかまをつくってるんだよ。うまくパンが焼けそうなんだよ」
「何でもよく製造するんだなあ。金井製造会社だなあ」
 僕がからかうと、金井君は、
「ああなんでもかたっぱしからつくるのさ、つくってる時、一番面白いよ。そのうち時計をつくろうかと思ってるんだぜ」
「へえ、時計、むずかしくないの」
「古くてどうにもならない時計があるからそれでぽつぽつ時計をつくろうと考えているのさ‥‥いいものつくってみせに来る
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