気にしています。
「大丈夫だよ。僕たちでがんばれば、おとうさんだって殺すことをあきらめてしまうさ――」
「そうかしら、でも、鶏って、人間に食べられるために生れてるみたいでかわいそうね――何も知らないで、土をほじくってるのをみると哀れになるわ」
養鶏場みたいに、たくさんかえばそうでもないのだろうけれど、たった一羽だから哀れになるのかも知れません。
朝夕は、とても涼しくなりました。金井君は時時やって来ます。
今日もお昼から勉強に来ます。
僕は、去年の空襲のことを考えると、何だか、今年はのんびりしていて、あわてないで勉強が出来るのがうれしいです。
18[#「18」は縦中横]
金井君がおみやげに金魚を一ぴき買って来ました。とても尾ひれのひらいた、頭でっかちの金魚です。
「これはね、らんちゅうというんだよ。昔はとてもはやったものだって‥‥一びき何百円もするのがあったんだって」
頭の上にこぶが出ていて、女のスカートのようにひらいた尻尾が、水の中で、そっとひらいたりつぼんだり消えかけたりしています。
そのうち、金魚の歌をつくろうと思いました。
金井君はどうようみたいなも
前へ
次へ
全79ページ中65ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 芙美子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング