大なる王という虎の小説を読みかけています。むずかしいけれど、とても面白い虎の生活が書いてあります。
 僕は絵をみるのも好きです。音楽も好きです。人間っていいなと思います。好きな絵をみることも出来るし、好きな音楽をきくことも出来るから、動物と違うねと静子にいつか話しましたら、静子は、
「あら、動物だって、風の音楽をきくし、雲だの木だのみてよろこぶでしょう」
 と、いいました。
 動物は、人間みたいにぜいたくなものをほしがらないから、自然な山の中で、のんびりくらせて、戦争なんかないからいいでしょうというのです。

     14[#「14」は縦中横]

 朝、静子が走って来て、かわいらしい小さい鳥が、つるばらの枝にとまっているというので、そっと行ってみました。もずの子がビロードみたいなむくむくした羽根をしてきょとんとしています。
 僕たちがそばへ行ってもおどろきません。
 時時もずのおかあさんらしいのが、僕たちを心配そうにして飛んでいます。何だか食物を運んでいる様子です。
「ねえ、おうちで飼いましょうよ」
 静子がさかんにほしがりますけれど、僕は飼うようになると、きっところすことになるから
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