、どこでお家が焼けたの?」
「本所緑町、去年の三月九日だ」
「学校は‥‥」
「五年きりでやめたのさ。うちは貧乏だから‥‥おとうさんはサイパンで戦死したし、おかあさんと赤ん坊は本所の区役所の前で別れたきり、だから僕一人になったのさ‥‥」
「どうして桶屋なんかに行ったの」
「人が連れて行ったから」
「おばあさんのところへなぜ早く行かなかったの……」
「おばあさん[#「おばあさん」は底本では「あばあさん」]、いくども深谷に来てくれたんだけど、桶屋なんてつまらなくなって、おばあさんのところへ行くのさ」
「おばあさんは何をしてるの」
「あらいはりなんかしていたんだそうだけど、今はよその手伝いなんかに行ってるんだよ」
「家は知ってるの‥‥」
「焼ける前、二三度おかあさんと行ったことがある」

     13[#「13」は縦中横]

 僕たちは、その男の子を連れてお家へかえりました。竹なんか、またいつでも、もらいに行けると金井君がいいます。僕もそう思いました。
 おとうさんは、竹ももたないで、あんまり早くかえった僕たちをみてびっくりしました。
 しらない男の子まで連れているので、おとうさんは変な顔を
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