んな事をひとにいうとしかられますよ、というと、おかあさんは、じっと僕を見て、涙ぐんでいうのです。
「健ちゃんは、いい子になって下さいね。人にも自分にもうそをいわない、正直な、いい人になって下さいね。――健ちゃんは戦争が好きなの?」っておっしゃいます。
僕は、戦争のことってよく知らないのだけれど、何処へ行っても米英を敵だ、というので、僕はわるい国はいやだと思っていました。第一、毎日B29[#「29」は縦中横]が、たくさんのお家を焼きにくるので、こわい国だと思つていました。
戦争がすむと、急にのんびりして、夜もお寝巻で朝までぐっすり寝られるし、宏ちゃんもおびえて泣かなくなりました。
「健ちゃんが大きくなったら、戦争なんかしないで下さいね。戦争があると、みんながくるしむのよ。くるしんだ上に、たくさんの人が死んでしまうのよ。その上、東京だってこんなに焼けてしまって、みんな住むお家もなくて困るでしょう」
とおかあさんがおっしゃいました。僕は焼野原になった東京を見るとかなしいのです。僕のお友達のお家も、ずいぶん焼けました。空襲があるたび、僕はおかあさんと静子と宏ちゃんといつもお家の壕にいまし
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