も話が出来てなぐさめになります」といいます。
僕は昨日もおかあさんと新宿へ行って、ローソクの安いのをみつけてあげました。安いのがみつかると、おかあさんはうれしそうに「まア、ありがたいわ」といいます。どうして、こんなにものが高いのかふしぎです。おかあさんの小さいころは、何でもやすくていいものがどっさりあったのだそうです。
6
このごろ、おとうさんは夕方になると、「ああつかれたね」といってかえってきます。
静子と宏ちゃんはまだ小さいから、いつでも同じように、
「おとうさん、おみやげは‥‥」といいます。
僕は静子と宏ちゃんにわざとこわい顔をします。静子には、何度いってきかせてもおとうさんがお仕事をみつけにいらっしやる事がわからない様子です。
おとうさんのまるい顔がすこしやせてきました。僕はお夕飯のあと、おとうさんの肩をたたいてあげます。
おとうさんはこのごろとてもさみしそうです。僕はおとうさんが何かよろこんで下さるようなことはないかと思います。
今夜、僕は何だかさみしかったのでおとうさんといっしょにねました。
「おとうさん」
「何だ」
「おとうさんはいくつですか」
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