をして、そっとして暮していようね、いまに、里から人間が来て、あのきばのある豚をたいじてくれるだろうとなぐさめていました。そのうちだんだんけものは豚に食われて行きました。山はさみしくなって、小鳥もあまりさえずらなくなりました。豚はますます得意でした。そのうち、ある日のこと、ほんとうに里からたくさんの人間が山へてっぽうを持って来て、きばを持った豚をうって行きました。
里にいた鶏は、てっぽうでうたれた豚をみてびっくりしました。かわいそうでしかたがありませんでした。どうして、豚さんはきばなんかほしがったのだろう、あんなものをほしがらなければ平和に暮してゆけたのに、ほんとうにかわいそうなのぞみを持った豚さんだと、鶏は大きくなったひよこにいいました。
おとうさんはこんなにおもしろいおはなしをして下さいました。僕は、これから、一つずつ、おとうさんのおはなしを日記にかいておこうと思います。
5
おとうさんが、戦争へ行く前にいつかいっていました。戦争がすんだら、たくさんおさとうが来るから、そしたらおしるこをどっさりたべようねっていっていました。だから、僕は、おとうさんに、
「もう、戦
前へ
次へ
全79ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 芙美子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング