争がすんだのですから、おしるこをどっさりたべられるのでしょう」
とたずねました。
おとうさんはへんなかおをして、
「戦争に敗けておしるこなんかたべられないよ」
とおっしゃいました。
でも、このあいだ、中野のとおりをおかあさんと歩いていたら、一ぱい十円のあまいあまいおしるこというびらを露店でさげているのを僕はみたのだけれど、一ぱい十円もするおしるこはどんなにあまいのだろうと思いました。
おかあさんは「高いおしるこね」とおっしゃいました。
僕は早くおうちでおしるこがたべられるといいなと思いました。おさとうは台湾でたくさんできていたのだそうです。おさとうって、どうしてつくるのでしょう。おとうさんに、おさとうはどうしてあまいのですかとききましたら、そうだなア、おさとうのあまいのはどうしてあまいのかときかれるとちょっと困るねとおっしゃいました。おとうさんは何でもよくしらべてから僕にはなしてくれます。
僕は何でもふしぎです。空をみてもふしぎです。ひるまは、ふわりふわり雲がういていて、青い空は、どこまで行っても広いのです。夜になると、青い空はくらくなって、どこまで行ってもくらいのですも
前へ
次へ
全79ページ中14ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 芙美子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング