との思いで、新潟行の行列を探すと、その行列はもうだいぶ並んでいた。それでも、あと二時間以上もあるので、大丈夫乘れそうだけれど、改札してからが問題だと思って、巖ちゃんは、何かいい工夫はないかと考えていた。
「改札しても、人がどっと走りっくらして乘るから、大變だね。僕、そっと、あっちの方の改札からくぐって、君達乘せてあげるよ。」
 と云うと、盲目の人達は、
「いや、それじゃア、大變だから、それはもうやめて下さい。驛員にみつかって、坊ちゃんが叱られると大變だから……。」
 と、濟まなそうにしている。
 行列の中に、やっと、リュックをおろして、二人の盲目の人はほっとしている。
 二人の話によると、東京では、家もないし、揉みりょうじを頼む人もあまりないので、これから、長野の温泉場をまわってみると云うことだった。温泉にも組合があって、なかなかふり[#「ふり」に傍点]でははいれないけれども、何とか住みこんで働いてみるつもりだと云っていた。何處へ行っても、このごろはものが高いので食べてゆくのが大變だし、にわかめくらなので、不自由で仕方がないと話していた。背の低い方のひとも、十二三位から眼が惡くなって、
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