よウ」
操が手紙をほうりつぱなしで、三人の男達のオーヴァをぬがせた。お粒は男の中の一人と見知り越しなのか、急にハスッパになつて、その男の肩に凭れ、何か耳打ちをしてゐる。
「オイ、一人だけもてるンぢや帰つてしまふぞオ」
男達は熱いタオルで顔を拭きながら、怒鳴つた。
「冗談いつちやアいけないわ、この間、中村さんに麻雀負けちやつたから、その負けたンで飲まれちやたまンないからさ、御ユウヨを願つてたところなのよオ、馬鹿々々しい。チェツだ」
「ホヽウ、それは耳よりな話だねえ、オイ少し位チヨウクワしてもえゝぞ、えゝぞ」
女達はキャツキャツと笑つた。
レコード、「ワン、キッス」のジャズがまはつてゐる。やうやく部屋の中が少しあかるくなつて来た――温く、あかるくはなつて来たが、さき程の、誰か早く這入つて来てくれゝばいゝといつた気持ちも、かうして三人の男達が這入つて来れば来たで、泳いで集つたのは一寸の間であつた。また、糸が切れたやうに、操やお粒をのぞいての女達は、バラツと四隅の椅子へ散つてしまふ。
「それで指輪返へしちやふの?」
「勿論よ、こンなものさへやれば、魂まで自由になるつて思つてる男が憎ら
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