ま盲めつぽうなのよ‥‥只母親と子供の事を考へると切なくなつてしまふけれどねえ、人間つて、どうにもならなくなつてしまふ場合つてあるぢやないの‥‥」
「何いつてンのさア、そんな、どうにもならない場合なンてものは、自分自身がつくるンですもの‥‥子供や、お母さんの事考へたらもつとどうにかなるものよ」
「えゝ――」
「えゝぢやないわよ、大丈夫? 気が弱くつちや駄目、――牧さんの方だつて、奥さんも子供さんもいらつしやるンですもの、判るでせう?」
「えゝ」
 あんなに、いつぱいあれもこれも話しがありながら、かう、つきつめて来ると、二人とも、中心よりも遠い線をもどかしくぐる/″\廻つてゐるだけであつた。
「お粒さんはどうしてるウ?」
 熱い茶をゴクリと呑み干すと、直子は白けきつた気持ちで、別の話にうつゝた。
「あのひとはあンなだもの‥‥このごろパトロンが出来て満洲へ行くとか云つてたわ――二人新らしい人が這入つて来たの知らないでせう。一人は素人だつたンだけど、このごろは結構、あの空気に染つて、はづかしツ気もなく大きな声で唄をうたつて酒を呑んでるわよ」
「まア、さうなの‥‥サトミさん達は?」
「さあ、今日
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