晩電話でもかゝつて来た?」
「かゝつて来たやうよ――これはお粒さんの話だけど、牧さんから直さんにかゝつて来たのを間の悪いお粒さんが取り次いで、まことにおふくれなンだから、あんなに当り散らして、果てはぐでんぐでんの大の字でせう‥‥やになつちやつたわ」
「おとつひの晩さア、お粒の奴、例のやうに直さんに大当りなんでせう[#「せう」は底本では「ねう」]‥‥それがまた、とてもゲスぽくつてたまンないのよ。――ところで、岡田さん、あんたも直子さんには参つてたンでせう」
「馬鹿云つてらア‥‥だが、嫌ひな女ぢやないさ――ところでだ二人で一緒にゐるとするならば、どつちも真面目な奴だから心配だナ」
「本当に‥‥」
 三人が三人とも、心配だ心配だと口の先では云つてはゐても、このまゝ二人が遠くへ走つて行つてくれた方が可憐で面白いには面白いと三人三様に考へてもゐた。‥‥そこへ、田舎大尽風に狐の毛皮をふかふかつけたコートを着て、蒼ざめた顔色のお粒が這入つて来た。
「外は温いわ」
「どうだい二日酔ひは?」
「何時の二日酔ひなのさア、毎日酔つぱらつてツから判りませんよ」
 コートをぬぎ、手袋をぬぎ、呆んやりとした眼でお
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