て、おや、これあ来るぞと思っていると、必ず来る」
呑気《のんき》なことを言っている。お絃は、お燗《かん》を引き上げた指先を、熱かったのだろう、あわてて耳へ持って行って、貝細工《かいざいく》のような耳朶《みみたぶ》をつまみながら、
「そうかえ。それは便利なものだねえ。それで何かい、きょうはその腕がピクピクしているのかえ」
笑って訊いた。なるほど、そういうお絃の右の手の甲には、御意見無用、いのち不知《しらず》と、二行に割った文身《ほりもの》が読めるのだった。
「アハハハ」茨右近は、顔に似げなく、豪快な笑い声を揚げて、「それがヨ、今日は朝からピクピクしつづけているんだ。見ねえ、あんまりピクピクするもんで、酒がこぼれて、さかずきが持てねえのだ」
右近は、酒杯《さかずき》を持った手をわざとふるわせて見せた。黄金《こがね》色の液体が杯《さかずき》のふちからあふれ落ちて、右近の手をつたい、肘《ひじ》から膝《ひざ》へしたたっている。
「お? いけねえ、何か拭《ふ》く物、ふくもの――」
「それ御覧、お米の水を、何だねえ、もったいない。着物だって、たまらないじゃないか。そんな真似《まね》をして見せな
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