て流名とした観化流《かんげりゅう》。
二
いま一般に江戸で行われている諸流のごとき、生《なま》やさしいものではない。
静中にあって心身をしずかにし、まわりのものの変移流転《へんいるてん》の相《すがた》に眼をとめている――が、一度発するが早いか、石を絶《た》ち、山を裂《さ》き、人を砕《くだ》かずんば止《や》まざる底《てい》の剛剣《ごうけん》――それが、喧嘩渡世の茨右近である。
加うるに、百|剣林立《けんりんりつ》のあいだといえども吾れいかんという、なに、そんな固《かた》ッ苦《くる》しいことは言わないが、とにかく、怖《こわ》いという感情を生れる時に忘れて来た、意地と張りとで固まっている美女、知らずのお絃《げん》という姐御《あねご》がくっついているのだ。
鬼《おに》に金棒《かなぼう》。似たもの夫婦。
これなら、どこの喧嘩へ顔を出しても、ひけをとることのないのが当り前で、江戸一円、何の喧嘩物言いと限らず、すこしむずかしいとなると、一切この喧嘩渡世へ持ちこんでくる。そしてまた、この帯屋小路から、茨右近と知らずのお絃がのこのこ[#「のこのこ」に傍点]出て行くが早いか、たい
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