って、茶の間《ま》に待っているこの喬之助を一眼見た時、「あの人相書とこの若僧! 服装《なり》かたちこそ変っているが、おれの眼力《がんりき》にはずれはねえ。それに、それほどの美男が、いくら江戸は広くても、そうざらにある筋はない。そうだ! この奴こそ、いま江戸中の御用の者を煙にまいている、神尾喬之助というお尋《たず》ねものに相違はねえのだ!」と、瞬間《しゅんかん》にして気がついたくらい、それほど、美男である喬之助だ。
それほど美しい喬之助と、瓜《うり》をふたつに割ったよう、どっちからどう見てもまったく同じで、ほとんど区別のしようがないというのだから、江戸一、いや、日本一の美男がもうひとり出来たわけで、さすがに江戸は広い。神尾喬之助の分身ともいいたい、親兄弟でさえ間違えそうな茨右近――知らずのお絃と一しょに粋《いき》な世帯《しょたい》をかまえて、神田の帯屋小路にひらいている物騒な商売、自ら名乗って喧嘩渡世とは一体どういうことをするのであろうか。
旗本奴《はたもとやっこ》ではない。といって、町奴《まちやっこ》では勿論ない。が、いわば巷《ちまた》の侠《きょう》である。町の男伊達《おとこだて》
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