うめい》の真面目《まじめ》な稼業《かぎょう》なので――。
芸州浪人の茨右近《いばらうこん》という男、これが、その、よろず喧嘩買い入れの喧嘩師で、叩くとかあん[#「かあん」に傍点]と音のしそうな、江戸前の生《いき》のいい姐御《あねご》がひとり、お約束の立て膝に朱羅宇《しゅらう》の長煙管《ながぎせる》、その喧嘩渡世の長火鉢のむこうで、プカアリ、プカリたばこをふかしていようという――知らずのお絃《げん》。
どうして『知らず』のお絃というかといえば、このお絃、浮世絵師《うきよえし》が夢に見そうないい女で、二十|七《しっ》、八《ぱち》の脂《あぶら》の乗り切った女ざかり、とにかく、凄《すご》いような美人なのが、性来《せいらい》の侠気《きょうき》が禍《わざわ》いして、いつの間にかこうして女遊人に身を持ち崩し、右手の甲に墨青々と彫りこんだ二行の文身《ほりもの》。曰く、御意見無用《ごいけんむよう》、いのち不知《しらず》。この命知らずが、知らずのお絃の異名をとった謂《いわ》れなのだが――それはそれとして。
ここに、世にも不思議なのは、主人の茨右近である。
他人の空似《そらに》ということは、よくある
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