渡世の旦那、茨右近さまでございますよ、ねえ黒門町」
 喧嘩渡世――とはそも何か?
 その頃、神田の帯屋小路《おびやこうじ》に、「喧嘩渡世」という不思議な看板《かんばん》を上げた、粋《いき》な構えの家があった。喧嘩渡世と筆太《ふでぶと》に書いた看板の横には、小さく一行に「よろづ喧嘩買い入れ申し候」
 まことに尋常でない稼業《しょうばい》。
 あるじは、芸州《げいしゅう》浪人の茨右近。
 内儀《おかみ》は、白無垢鉄火《しろむくてっか》の「知らずのお絃《げん》」。
 じつにどうも変った組み合わせが変った渡世をしているもので――。
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│ 喧嘩渡世           │
│   よろづ喧嘩買ひ入れ申し候 │
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   お命頂戴

      一

 神田、帯屋小路《おびやこうじ》、
『喧嘩渡世』――という、奇抜《きばつ》な看板をあげた千本|格子《こうし》の家。よろず喧嘩買い入れ申し候、は実にふざけ切っているようで、これが決してふざけているのではない、正真正銘《しょうしんしょ
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