すわって、喬之助の眼を見つめていた。
「参りました。誰が訴人《そにん》をしたのか、わたし達にもわかりませんでございます。ただ、わたし達があなた様をお止め申しておいて訴え出たのではないことだけは、どうぞおわかりなすって下さいませ」
 喬之助が、うなずいた。しずかな低声《こごえ》だった。
「それは、よッく解っております。お前さま方が訴え出たのだなどとは、拙者は夢にも思いませぬ」
「それを伺《うかが》って、ほんとに安心致しました」お妙は、ニッコリした。「で、どうなさいます?」
 喬之助もほほえんだ。
「さア――来た以上、仕方がない。不本意ながら、お宅《たく》を血だらけに致すよりほか、まず、途《みち》はござるまい。斬合《きりあ》いには、散《ざん》バラ髪《がみ》が一番|邪魔《じゃま》でござる。手拭いを一本――」
「鉢巻《はちま》きでございますか」
 お妙は、自分のしていた緋鹿子《ひがのこ》のしごきを手早く取って、二つに食《く》い割《さ》いた。
「存分にお働きなすって――」
「かたじけない。なアに」と笑って、「不浄《ふじょう》役人の五十や六十――」
 と、喬之助が立ちかけた時、今まで、戸口に立って
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