た。
「よく降ります」
「左様。風も、だいぶひどいようで」
茶の間《ま》のほうで、こんなことを言い合っているのが、台所《だいどころ》にすわって、ひとり冷たくなった御飯を食べていたお妙に聞えて来た。自分はこんなに、御飯も咽喉《のど》へ通らないような、わくわくした気もちでいるのに、なぜあの人は、ああ落ちついていなさるだろう――お侍というものは、みんなあんなにつん[#「つん」に傍点]としてそっけ[#「そっけ」に傍点]ないものなのかしら! そう思って、お妙はちょっと淋《さび》しい気がした。
と、その時だった。裏口に、ちらりと灯《あかり》がさしたような気がした。油障子《あぶらしょうじ》に、提灯《ちょうちん》の灯《ひ》が動いて見えた――と思ったのである。おや! お弟子の誰かでも帰って来たのかしら? と、立ち上ろうとすると、家を吹き飛ばしそうな、恐ろしい雨風《あめかぜ》の音だ。
その雨にまじって、人声がする。おもての方らしい。低声《こごえ》である。
「御めん下さい。ごめん下さい」と、二三声《ふたみこえ》。つづいて、「壁辰さんは、こちらですかい」
壁辰が起って行った。がらり格子をあけた。
「壁
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