こにいなさる分にゃア、わたし共はちっともかまいませんが、何しろ人の出入りの多い家だから、かえってお為にならねえかも知れねえと、それを心配いたしますよ」
厭《いや》なお父《とっ》つぁん! なぜあんなことを言うんだろうと、お妙は恨《うら》めしかった。
「お妙」父親が呼んでいた。「飯にしよう。一本つけるんだ。魚安《うおやす》へ走ってナ、何か見つくろいをそう言って来な」
お妙が、ちょっと顔を直して、いそいそと魚安へ走った時、さアッと雲の流れが早く、いまにも泣き出しそうな模様になっていたのだった。
六
こみ入った話は、いずれ食後にでもというのであろう。お酒と御飯のあいだ、壁辰と喬之助は、世間《せけん》話のほか何もしなかった。お妙にとっては、消え入りたいように恥かしい、お酌と給仕であった。喬之助は、その白い端正《たんせい》な顔に何らの表情もうかべずに、べつに遠慮をするでもなく、膳《ぜん》に向っていた。ただ杯《さかずき》の数は、すすめられても余り重ねなかった。しまいには、壁辰は手酌で呑んでいた。やがて、食事が終った。もういつの間にか、そとは恐ろしい暴風雨《あらし》の夜になってい
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