――とすれば――こう考えて来た時、お妙は、自分が喬之助に熱恋《ねつれん》を捧《ささ》げているのであることを知って、一時に、耐《た》え切れない恥かしさが燃え上って来て、顔が、火のようになっているのに気がついた。
あんなことを口走って、あの方は、何て下素《げす》な女であろうと、さぞ蔑《さげす》んでいられることであろう。こうも思った。
お妙は、喬之助の礼には答えなかった。答えることが出来なかった。わけのわからない泣き声が出そうになるのを押し返すのに、彼女は一生懸命だったのだ。喬之助の顔を見ることも出来なかった。
長いこと、白痴《ばか》のようにぼんやりと、つめたい板の間にすわったきりだった。
騒ぎにとり紛《まぎ》れて、三人とも、筆屋幸吉が先刻《さっき》まで裏口に立ち聞きしていたことにも、身をひるがえしておもて通りへ駈け出て行ったことにも、気がつかなかった。
茶の間では、父の壁辰と喬之助とが、ぽつり、ぽつりと話し合っていた。当りさわりのない話題だった。元日の事件のことや、喬之助の身の振り方などには、まだどっちも触《ふ》れていなかった。ただ、こう言っている父親の声が、お妙に聞えた。
「こ
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