そこに気を失ってしまった。
「なに、直ぐ呼び返します。ちょいとわたくしが手当てを致しますれば――」
折角、あの神尾喬之助の居場所を知らせに来た者が、その肝腎《かんじん》の場所を言わないうちに呼吸《いき》が絶《た》えてしまってはしようがない。気が気でないので、一同があわてふためく中で、医道《いどう》の用はこの時にありとばかり、長庵は大得意《だいとくい》だ。意識不明の幸吉を仰向《あおむ》けに寝かして、
「ちょいと、失礼を」
なんかと言いながら、いやに落ちついて十徳を脱《ぬ》ぎはじめた。いくらまやかし[#「まやかし」に傍点]医者でも、幸吉の気絶ぐらいは直せるだろう。
山城守をはじめ一同は息を凝《こ》らして、長庵の手腕《うで》によって幸吉が意識を恢復《かいふく》し、ふたたび口をひらくのを待っている――。
そとは大暴風雨《おおあらし》になっていた。
四
そとは大暴風雨になっていた。
で、黒門町の壁辰の家でも、早くから雨戸をしめ切っていた。乾児《こぶん》たちは、筆屋のふるまい酒に酔い痴《し》れたあげく、例によって吉原へでも繰りこんだのであろう。まだ一人も帰って来ていなか
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