、三の円頂《えんちょう》の男である。黒っぽい紬《つむぎ》に茶縮緬《ちゃちりめん》の十|徳《とく》のような物を着ている。剃《そ》った頭が甲羅《こうら》を経て茶いろに光って見える。眼のギョロリとした、うすあばた[#「あばた」に傍点]の長い顔だ。不釣合《ふつりあい》に大きな口をしていて、その口を、しじゅう何か呑《の》みこむ時のように固く結んでいるのだ。村井|長庵《ちょうあん》といって、麹町平河町一丁目の町医である。医術のほうの手腕《うで》は大したことはないらしいが、幇間《たいこもち》的な、辯巧《べんこう》の達者な男なので、この脇坂山城守をはじめ、こういう大所《おおどころ》を病家に持って、無礼御免に出入りしているのだ。
村井長庵は、その固く結んでいる口を動かした。何か言うのかと思うと、手を口のところへ持って行って、口びるを撫《な》でた。言葉を拭《ふ》き脱《と》ったような具合だ。黙り込んで曖昧《あいまい》なお低頭《じぎ》をした。
山城守が続けていた。
「伊豆屋のほうもある。しかし、琴《こと》二郎のことは、お前に任せてあるのだ。よろしきように取り計《はか》らうがよい」
「はい」村井長庵は頭を下
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