は、さあッと乾いて、しっくり固化《かたま》っていて、まるっきり上りが違う。恐ろしいものだ――と、いうのは、これは、お父つぁん、あなたの口癖《くちぐせ》、十八番《おはこ》じゃアありませんでしたかしら? それに何です? その江戸ッ児の、黒門町の心意気はどこへ行ったのです? そりゃあこのお方は、いま江戸中の目あかしが、それこそ足跡を嗅《か》ぎ廻っている重い科人《とがにん》かも知れません。でもねえお父つぁん、この人は黒門町の壁辰は十手をあずかっている。ここは岡っ引きの家だと知って、それを承知ではいっていらしったのではございません。ほんとに知らずにいらしったのです。言ってみれば、この人がここへ来たのはほんの廻《まわ》り合わせ、捕えたところで、べつにお父つぁんが網を手繰《たぐ》ったわけではなし、あんまり手柄顔も出来ないじゃアありませんか。それより、あたしは、寝覚《ねざ》めが悪かないかと思いますよ。ことにこのお方は、その用事とやらが済み次第、御自分から手をまわして、きっとお父つぁんの手にかかると、お侍のお言葉です。あんなにきっぱり[#「きっぱり」に傍点]お約束なすっているじゃアありませんか。お父つぁ
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