は目明し、それを落してやったとあっちゃあ、お上に対《てえ》して、あっしの一|分《ぶん》が立たねえのだ。おまけに、これから十七人の命を取ろうとしているお前だ。聞いた以上は尚さら、おれが知らぬ顔をしようとしても、この十手が承服《しょうふく》しねえのだッ!――神尾喬之助! 御用だッ!」
 言い終るや、ぱッ! と杉戸を蹴倒《けたお》した。と見る。そこに、喬之助が立っている。顔いろ一つ変えずに、鼻と鼻がぶつからんばかりに、ぬッくと立ちはだかっているのだ。
「御用!」
 振りかざした自慢の十手、ひゅうっ! と風を切って喬之助の肩へ――落ちんとして、横に滑《すべ》った。喬之助が体《たい》をかわしたのだ。
「待てッ! では、飽くまで捕ろうというのかッ」
「もう問答は無用だ。この十手は、壁辰という左官屋の手にあるんじゃアねえ。お上の御法《ごほう》だ。神妙にしろッ!」
 再び、朱総《しゅぶさ》をしごきざま、宙《ちゅう》鳴りして来る江府《こうふ》一|番《ばん》壁辰の十手だ。喬之助は、この場合、血を好まなかった。が、こうなってはもう止むを得ない。裸身《はだか》のまま袂《たもと》に潜《ひそ》ませていた河内太郎蛇
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