丸《かわちたろうじゃまる》の短剣だ。そいつが、光線のように斜《ななめ》に走った。蛇丸《じゃまる》――という名のとおりに、生き物のごとく自ら発して、遮《しゃ》二|無《む》二に襲いかかってくる壁辰の脇腹《わきばら》を、下から、柄《つか》まで肉に喰い込んで突き――上げたと見えた秒間、その紙一枚のような瞬刻《しゅんこく》だった。
 ほらほらと椿《つばき》の花が咲いたように、剣と十手の二人のあいだへ、お妙が、身を投げ出して割り込んで来たのだった。
「ま、待って下さいッ! お父《とっ》つぁん、待って! 待って!」
「ええッ! そこ退《の》けッ! 娘ッ子の出る幕じゃアねえ! ケ、怪我《けが》しねえうちにすっ込んでろ!」
「いいえ、引っこんではいられません!」と、平常《ふだん》のお妙とはまるで別人、彼女はその場に坐り込んで、あっという間に父壁辰の脚《あし》に纏《まつわ》り付いた。
「おとっつぁん! 後生ですッ! 助けて上げて下さいッ!」
「な、何だと! これ、退《ど》け、退《ど》け! ええッ、退《ど》かねえかッ」
「いいえ退きません! 死んでも退きません!」
「何を言やアがる! これお妙、汝《われ》ア
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