。武士のことばだッ! 二言はないッ! 誓《ちか》うぞ壁辰どの、どうだッ? 今日のところは眼をつぶって、この拙者に無用の血を見せずに、このまま戸外《そと》へ放《はな》してくれるかッ?」
 真剣《しんけん》だ。復讐魔《ふくしゅうま》と化しさっている喬之助の一語一語が、剃刀《かみそり》のように冷たさをもって、戸を貫いて壁辰の胸を刺《さ》す。
 が、壁辰は笑い出していた。
「げッ! お前《めえ》さまの身体《からだ》にゃア八百八町の御用の眼が光っているんだ」
「存じておる。ほかの者なら頼まぬ。黒門町の壁辰と見込んですべてを打ちあけて頼んでおるのじゃ」
「煽《おだて》は利《き》かねえや。なあ神尾さま、おめえさんは、このあっしを岡っ引きと知って来なすったかね?」
「――――」
「内実《ないじつ》は、ただの左官職と思って、しばらく下塗《したぬ》り奴《やっこ》にでも化けこんで、御公儀《ごこうぎ》の眼をくらます気でか」
「それは、言うなら、そのつもりで来たのだ」
「と、飛んでもねえ。虫が好過《よす》ぎらあ――神尾さん、あんたのおかげで、罪もねえ奥様や、また弟御《おとうとご》や伊豆伍夫婦まで召し捕られて強《
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