ぬ」
「じょ、冗談《じょうだん》じゃアねえ。そっちにシギがなくてもこっちにそのシギとやらが大ありなんだ――お前さんの言うように、そうお歴々の首がころころ落ちて堪るもんか」
「堪るも堪らぬもないッ! 拙者は、一つずつ落してゆくのだッ!」
「吐《ぬ》かしゃアがれッ! 言わして置けば、勝手な音をほざきやがる。おめえさんはどんなに腕《うで》が立つか知らねえが、先様だって、藁《わら》人形や据《す》え物じゃアあるめえし、そう口で言うように、立派なお侍さんの首がスパスパ転《ころ》がってお堪《たま》り小法師《こぼし》があるもんか」
「ふうむ。よし! もし転《ころ》がったらどうする」
「どうもこうもねえ。その前《めえ》にてめえを引っ縛《くく》るのだ」
「これ、壁辰殿、拙者は、かほどまでに事理《こと》を別けて頼んでおるではないか――こういう用がある以上、いま直ぐ貴殿の繩にかかるという訳には参らぬが、その代り、何年、いや、何十年かの後、この十七人の十七人目、最後の一人を首にしたその日に、拙者のほうから必ず再びこの家へ参って、その時こそは逃げも隠れもせず、この両の手をうしろへ廻して、笑って貴殿の繩を受け申そう
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