出していた。鉄火《てっか》な姐御の知らずのだけに、そっくり男に見えたに相違ない。
その夜、源助町乱闘の注進を受けた大岡様は、直ちに金山寺屋の音松を呼んで何事か含《ふく》め、至急に黒門町の壁辰の許へ走らせた。表向《おもてむ》きは、この喬之助召し捕りを壁辰に命じたのである。壁辰としては、喬之助に繩を打つ時は自分が打つという約束がある。唯ひとり、早速|身拵《みごしら》えして源助町へ走った。その、壁辰が家を出ようとする時である。成らぬ恋に悶《もだ》えていたお妙は、いよいよ愛する喬之助に最後の時が来たことを知って、
「お父つぁん! お約束です。今度こそはあたしも止めませんから、立派に喬さまを繩にして下さいね」
悲叫《ひきょう》とともに、お妙は自害《じがい》して散ったのだった。壁辰は娘の介抱《かいほう》もしたいが、刻は移る。そうしてはいられない。待っていた音松も、泪《なみだ》をかくして急《せ》き立てる。ついにうしろ髪を引かれる思いで源助町へ駈けつけ、騒ぎの真ん中へ飛び込んで、単身《たんしん》喬之助を縛したのだが――いよいよ大岡様の前へ引き出してみると、それは茨右近だったのである。壁辰はわざと右
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