きわめ、魚心堂はその唯一の武器である別誂《べつあつら》えの釣竿を振り廻し、知らずのお絃ちゃんは男装している。しかも、喬之助や右近と同じ装束で、長い刀《やつ》までひねくり廻しているんだから、ちょっと見ると喬之助が三人いる訳で、実にどうも紛《まぎら》わしいこと夥《おびただ》しい。大変な乱闘となったが、屋敷の内外に朝まで斬り結んだ。その夜、首になった番士は、十一番首飯能主馬、十二番首箭作彦十郎、十三番首池上新六郎……愛嬌者の保利庄左衛門は池へ潜《もぐ》って首を出したり引っこめたりして助かり、荒木陽一郎は、先祖又右衛門の名を辱しめること甚しいやつで、女中部屋へ逃げこんで、蒲団《ふとん》をかぶって女中になりすまし、一命を全《まっと》うした。立派に働いて、しかも最後まで生き残ったのは、わずかに山地重之進、横地半九郎の二人きりであった。
この時お絃の働きは素晴らしいもので、あとまで皆男だとばかり思っていたそうである。広い邸内を、唯ひとり血刀《ちがたな》を下げて相手を求めて歩き廻っていたところは、天晴《あっぱ》れな若武者ぶりだったとある。もっとも、がんどう頭巾というやつ、あれをスッポリかぶって眼だけ
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