近を捕《と》って、死んだ娘の心を察して間違いに事寄《ことよ》せ喬之助を逃がしたのだった。その喬之助は、音松と魚心堂の計らいで、源助町の乱闘の場から直ちに、呼ばれて来ていた妻の園絵とともに東海道を京へ落ちて行く。出発しようとすると、音松が呼びとめてさり気《げ》なく言った。
「お妙さんからよろしく」
 お妙の死は知らせなかった。喬之助はニッコリ礼を返して妻の手を取って西へ急ぐ。早朝、忠相は非公式に右近を審《しら》べて、伊勢の名家《めいか》の出《で》と知り、山田奉行当時の友人の息《むすこ》ではあり、且つ人違いで当の喬之助ではないので、お絃とともに許してやる。凡ては忠相が一人で飲み込んで全事件を揉《も》み消したのだった。二人は、忠相の情で姿を変え、数刻《すうこく》遅《おく》れて、同じ東海道を伊勢《いせ》へと発足《ほっそく》する。間もなく、喬之助と園絵、右近とお絃、二組の夫婦は、よく似た二人の良人を中に、過去の一切を笑い話として賑やかな旅をつづけて行く。品川のはずれまで魚心堂が見送りに出て、幸先《さいさき》を祝って四人のうしろから扇子の風を送った……四人旅、悲しく死んだお妙の泪のような日照《ひで
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