「ここはどうあってもそうあるべきところ」
「然らば即座にさようお取計らい下さらぬか」
「それについて、越前に一計がござるが……」
あとは、駕籠と駕籠を一そう近づけて、耳打ちのように密談《みつだん》になったが、そのまま二人は、やがて、屈託《くったく》のない笑い声を残して左右に別れた。
その夕方である。
「御免下さいまし」
神田の伊豆伍の店へズイとはいって来たのは、金山寺屋音松である。月番《つきばん》の町年寄《まちどしより》立会《たちあ》いの上で、おろおろしている伊豆伍夫婦にお上の一書を渡した。またお差紙《さしがみ》かと開いてみると、「お油御用《あぶらごよう》精励《せいれい》でお上も満足、今後とも充分気をつけて勤めますよう?――」言わば褒状《ほうじょう》である。大岡様からそっと出たものだ。一計といったのはこれである。これで、今べつに改まって御沙汰はなくても、伊豆伍の油御用は永続的なものとなり、従って、筆幸としては痛い釘を一本刺された形で、スッカリ断念《だんねん》しなければならなかった。脇坂山城守が面目《めんもく》をつぶしたことは言うまでもない。間もなく退官して隠居《いんきょ》の身と
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