から開けて、のそりと立ち出でた異装の人物がある。家の中で釣り竿《ざお》を担いでいるさえあるに、その挨拶がまた、恐ろしくサッパリしたものだ。
「首を供《そな》えたのはわしじゃよ。お手前は、神保先生じゃろう。一つ、釣り上げてくれよか」
というのである。言わずと知れた魚心堂大人だ。妙見勝三郎の首がくわえている紙きれを、ツと毟《むし》り取って、造酒の足もとへポイと抛《ほう》った。
「ソレ! 十番首じゃよ」
ニコニコ笑っている。
三
それより先、この源助町の道場、無形一刀流の看板を上げた玄関口は、大変な騒ぎだ。何しろ、深夜に客が来て、その客の背中に貼紙がしてある……「亡者」と大書して。
それさえ事穏やかでない上に、しきりに案内を乞うていたその客が、取次ぎに出てみると、何時の間にか首のない屍体になって、いともおとなしく寝ころんでいるのだから、これは胆《きも》をつぶすほうが当りまえで。
発見者の大声に夢を破られて立ち出でた一同、三羽烏の大矢内修理、比企一隆斎、天童利根太郎をはじめ春藤幾久馬、遊佐剛七郎、鏡丹波ら、ワイワイ騒いでいる。
「おいおい、他人《ひと》の家へ首を忘れて
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