来やアがった。テッ! そそっかしいやつもあるもんだ。誰だこりゃア?」
「馬鹿ッ! 首を忘れて来るてエやつがあるか。第一、首が無くて歩けるか。方向がわかるまい。眼は、御同様首についているからナ」
「なるほど、それは理窟だ。が、その首がなくて、どうしてここまでやって来たろう?」
「今の今まで、頼もう、頼もうといいおったが、あの声は口から出おったに相違ない。口は首についておるはず。その首が無くして声を発したとは、イヤ、貴殿の前だが、不可思議千万……」
 ナニ、不可思議千万なことがあるものか。
「一体何者だ」
「何者だと言って、それは無理じゃよ。見らるる通り首がないのじゃから、どこの何ものともわからぬ」
「あッそうか。首は、どこかそこらに転がっておらぬか」
 安人形と思っている。一人が屍体に手をかけて見て、
「おやア! 背中に紙が貼《は》ってあるぞ! 何だと……亡、者? ワッ! 亡者とある。ウム、確かにまた、喬之助の悪戯《いたずら》――」
「すると、御書院番士の一人にきまった。これはこうしてはおられぬ」
 こうしてはおられぬと言ってさし当りどうしようもない。剣士一統、矢鱈《やたら》に柄を叩いて
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