息を前に置いて、抱きこむように、のめるように両肘《りょうひじ》を突いている。
大盃を引きつけて、造酒、晩酌《ばんしゃく》が今までつづいているのだ。
呼ばれたのは、造酒の妾《めかけ》のようになっている年増《としま》のお六である。
前にすわって、横を向いてボンヤリ考え込んでいたのが、
「何ですよ」
「酌《しゃく》をしろ……」
杯を突き出しながら、造酒はちょっと聞き耳を立てた。
玄関に当って、人声がする。
「出てみましょうか。誰か来たようでございますよ」
「うむ、ナニ、お前が出なくても、誰かいるだろう」
「でも――」
「貴様は、出んでもよい。それより、酒を持って来い」
「そんなに召上《めしあが》って――」
「持って来いと言ったら、持って来い」
お六が、仕方なしに立って台所へ行くと、間もなく、縁《えん》の障子があいて、取次ぎの門弟が顔を出した。
「先生」
「何だ。客か……」
「はい、脇坂様から、お約束の品を届けに参ったとか申しまして――」
「ナニ、届けの品……脇坂殿から――」
「はい」
門弟《もんてい》はクスクス笑い出して、
「若い娘を駕籠に乗せまして……」
「おウ、いつぞやの約
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