さまだと、にっこりして、
「いらっしゃい。喧嘩? うちの人は居ませんよ」
戸塚の三次は、何も言わずにズイとはいりこんで、パラリ、手拭を取りながら、そいつを肩《かた》へ載《の》っけて、じろりとお妙を見た。
ちょいと凄味《すごみ》を見せようというつもりらしい。勝手に上《あが》り框《がまち》へ腰を下ろして、精《せい》ぜい苦味走って控えながら、
「仁儀てえところだが、まま御めんなせえよ――ところで、姐御、れこ[#「れこ」に傍点]は居ねエッてったね?」
三次は、拇指《おやゆび》を出して見せた。変なやつだと思いながら、お絃がヒョイとお妙を見ると、悪者と言ったのは此男《これ》のことなのだろうとすぐ気がついたほど、お妙は、真青になって、木の葉が風に吹かれるようにふるえているのだ。
知らずのお絃は、素早く客の正体を掴《つか》んで一時に強く出た。
「うちの人はいないけど、お前さんなんかに舐《な》められアしないよ。何の用だい」
「何の用? テッ! 何の用もかんの用もあるけえ」お絃のかげに隠れるように、土間の隅に小さくなっているお妙へ顎《あご》をしゃくって、「これア何家《どこ》の娘だ、何家の。え?」
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