弱いほうに味方するこころ、お妙のために口をきいてやろうという気がすわって、知らずのお絃は、ソロソロ性得《もちまえ》の鉄火肌《てっかはだ》を見せ出した。上りくちにしゃがんで、膝に頬杖をつきながら、切れの長い眼に険《けん》を持たせて、ジーッ! 三次を見つめた。
「どこの娘? どこの娘だっていいじゃないか。知りあいの家の娘さんさ。大きにお世話だよ。お前こそ、どこの人だい。江戸じゃアあんまり見かけない鬼瓦《おにがわら》だねえ」
「何を吐《ぬ》かしゃアがる。知りえいの家の娘もねえものだ。これアおいらの妹、おいらアこれのお兄様《あにいさま》なんだ。いいか、わかったか。わかったら、つれて行くぞ。文句はあるめえナ」
「飛んでもない!」お妙が、お絃のうしろから、恐怖におののく声で、「兄だの、妹だのと、みんなうそでございます。わたくし、そんな方にお眼に掛ったこともございません」
「ソレソレ、それがお前の病《やまい》というものだ」三次は、ちょっと優しい眼になって、お妙のほうへ擦り寄りそうにしながら、「アア情ねえ。なさけねえ。いくら狂っているからって、現在てめえの兄貴ともあろうものを見忘れるなんて――」
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