るんだ。べらぼうめ、一つ斬って見せるから、踏みこんで来いッ!」
いまは主人のない屋敷の反対側の大広間で、他の番士一統と源助町の同勢を一手に引き受けているのが、喧嘩の先生、茨右近……観化流の定法。一|天無蓋《てんむがい》の大上段に振りかぶったまま、喧嘩師右近、さすがに場数を踏んでいるから呑気なものだ。
ひょうひょうした調子で講釈《こうしゃく》をしながら、
「何でエ! 雛《ひな》の節句《せっく》の内裏様や五|人囃《にんばやし》じゃアあるめエし、並んでじっとしていねえで、飛び込んで来たらどうだ。ヤイ、てめえ、眼の色が変っているぞ。それから、そっちのお方、失礼だが、汗が眼へはいりかけてらあ、拭きな、ふきな。その間はいかねえから、ユックリ汗を拭きなってことよ」
実に嘲弄《ちょうろう》し切ったもので、しかも、右近の足は、さっき殺《や》ったのか、真赤《まっか》に染まって四肢《てあし》や顔が青絵具《あおえのぐ》のような青い屍骸をひとつ、踏まえているのだ。見ると、日向一学である。何番首、そんなことはどうでもいい。
一同はこの右近を喬之助とばかり思いこんで、何しろ、室内に犇《ひし》めき合っているの
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