だから、こうなると、多勢のほうが不利である。味方の誰をも害《そこな》うまいとすればするほど、満を持して容易に発し得ない。そのうちに、気を焦《いらだ》って源助町の比企一隆斎、鏡丹波らが、一時に左右から斬りこんで[#「斬りこんで」は底本では「軒りこんで」]、たちまち打《ちょう》ッ! の刃音、発《はつ》! の気合い、混剣乱陣《こんけんらんじん》の場と化し去ったが、茨右近は、大体の人相を喬之助から聞き知っていて、番士と源助町の区別はつく。源助町と無駄に刃を合わすより、一人でも多く番士を斃《たお》したほうがいいから、源助町の剣をひっ外《ぱず》して、長駆《ちょうく》、番士の群へ殺到すると、その気魄《きはく》の強さにおそれを抱いたものか、ひとり刀を提げてその一団から逃げ出したものがある。峰淵車之助だ。それと見て、右近あとを追う。
廊下づたいに、逃げるもの、追う者に競争がはじまった。
ほかの連中も、直《ただ》ちに雪崩を打って右近のあとを追い出した。が、人数の多いのは、この場合、どこまでも不利益だ。いたずらに肩を押し合い、揉《も》み合い、めいめい先へ出ようと邪魔しあって、お神輿をかつぐようにギツシリ
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