いながら、喬之助が、手拭を裂いて右手の小指を縛《しば》って起ち上ったところだ。
 発見《みつ》けたのは、先頭《さき》に立っていた屋敷の主人《あるじ》長岡頼母である。
「むッ!」
 ものを言うひまはない。おめきざま、一剣、尾を引くと見えて喬之助の胴へ――極まったか! に思われた秒刻、ガッ! 柄《つか》を下げて払い落した喬之助だ。流された頼母、勢こんでおのが力に押されて、タタタタアッ、のめり足、爪さきに畳を踏んで、ままよ、ふところ深くつけ入って鍔《つば》ぜり合いといこうとそのまま、飛び込んで来る……そこを! 腰をおとしざま、逃げるように退った喬之助、低めた剣を立て直して、つるぎの逆茂木《さかもぎ》、下正眼につけたうえ、はずみというものは恐ろしいもので、見事、頼母は自分のほうから追いかぶさるようにブッ刺さって、
「ウワアッ!」
 叫喚《きょうかん》だ。血しぶきだ。朱硯《しゅすずり》を叩き割ったように、血が、ザッと音《おと》して噴火のように飛ぶ。いわゆる断末魔というやつ。このウーム! ウーム! という声は、何とも言われない恐ろしいものだ。刀が手を離れて、流星のように半弓をえがき、鈍いひびきとと
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