っきからその議論に聴耳を立てていた人かげが、同時に眼じりに皺《しわ》を刻《きぎ》んでにっこりした。
 越前守忠相である。
 許されて、奉行として、中の間の陰聴《かげき》きをしているのだ。

      四

「ムッ――!」
 火と熱した白刃だ。乱剣に夜は更けて、闘う者は、声もないうなぎ畷、長岡頼母の屋敷では、降って沸いたような血戦に家族は近くの相識《しりあい》の家に避難して、いつの間にか、気のきいた者が襖障子を取り払い、縁に近い庭に仲間がかがり火を焚《た》いて、屋内にも燭台を立てならべ、明々とかがやいてまるで白昼のよう……そこの廊下の角、かしこの物かげから、自在に出没する二人の神尾喬之助――喬之助と右近――を、御番残士と源助町の勢は一人とばッかり思いこんで、白刃をひッさげた長岡頼母、博多弓之丞、飯能主馬の三人が、
「ウウム、どこへ参った」
「屋敷のそとへ逃げはしまいな」
「逃げたかも知れぬぞ、ことによると」
 大声に話し合いながら、奥の部屋部屋を探し廻って、仏壇の置いてある一室の前を通りかかると、
「ちょっと小指をかすったのだ。なあに、大事ない。蚊が喰ったようなものだ」
 ひとり言をい
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