なん》ごと――!」
「あアン! 何が障子じゃ? 年は老《と》りとうない。魚が泡《あぶく》を吐《は》いとるようで、さっぱり聞えぬ。何じゃイ、あアン?」
近藤相模守は、どこまでも金《かな》つんぼを装《よそお》って、両手を耳のうしろへ立てて、せかせかと膝を進めた。
またちょっと、シインと座が白《しら》け渡っている。
二
中の間である。
大目附お目附の詰所で、太い柱が立っている。片方は二間二枚のお杉戸、この一枚はしじゅう開いていたもので、縁のそとは箒目《ほうきめ》をみせたお庭土、ずウッと眼路《めじ》はるかにお芝生がつづいて、木石《ぼくせき》の配合面白く、秋ながら、外光にはまだ残暑をしのばせる激しいものがある。さんさんと霧雨のような陽が降って、遠くは、枝振りの変った松の若木が、一色ずつうすく、霞んで見えるのだ。
まことに結構な眺《なが》め……。
その結構な眺めを前に、いまこの中の間に寄合っている重役の方々は、大目附|近藤相模守《こんどうさがみのかみ》をはじめ、久世大和守《くぜやまとのかみ》、牧野備中守、岩城播磨守《いわきはりまのかみ》、お側御用《そばごよう》お取次《と
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