顔つきもいささか緊張している。もっとも、ふだんから、どっちかというと緊張した顔つきのお絃姐御なのだが……例によって、火鉢の薬罐《やかん》に一本ほうりこんで、御意見無用いのち不知の文身《ほりもの》を見せながら、ちょいちょい指さきで摘まみ上げてみては、またズブリと湯へ落しながら、
「アアア、何か間違いでもなければいいけど――今夜は、二人揃って本郷追分《ほんごうおいわけ》のうなぎ畷《なわて》、長岡頼母とかってやつんとこへ、斬り込みに行くとか言って出かけたんだったっけ……あたしも、これから行ってみようかしら」
ふかしていた長煙管《ながぎせる》をガラリ抛り出して、お絃がブラリと起ち上った時、
「御めん下さいまし……」
あわただしく表の戸があいて、転《ころ》がるように跳《と》びこんで来た若い女――息をはずませて、ピシャリ! はいって来た戸を締め切りながら、お妙は、お絃を見上げた。
「ちょっとの間、お匿《かくま》い下さいまし。悪ものに追われまして――」
「何だい、お前さんは」
お絃は、思わず怖《こわ》らしい声になっていた。
「この頃よく家ん前を迂路《うろ》ついてる女《ひと》じゃないか。どうした
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