外の何ものかであり得るだろうか。
お妙は、あの職人姿で飛び込んで来て、自分が捨身《すてみ》のたんか[#「たんか」に傍点]で父壁辰の十手から救った喬之助を、忘れようとして忘れられないのだった。その喬之助は、あの夜長谷川町の金山寺屋の親分が、間違いでか好意でか――お妙はそれを、故意、しかも金山寺屋さんの好意と解していたが――喧嘩渡世の茨右近と言いくるめてくれたばっかりに、あぶないところを助かって、今はその喧嘩渡世に身を寄せ、ひたすら十七の首を列《なら》べるべく、復讐に余念ないのだが――その一|轍心《てつしん》のすがたを見るにつけ、お妙は、そうして物事に精魂を打ち込む殿方のお心もちを、頼《たの》もしい、尊いと思わなければならないと自分に言い聞かせながらも、内心、犇々《ひしひし》と淋しい気もちに包まれていくのを、どうすることも出来なかった。
喬さまは、じぶんのことなど何とも思ってはいらっしゃらないのだ。喬さまには、御番衆の首を落して廻ること以外、何の生き甲斐も、何のたのしみも、おありになりはしないのだ。いや、そうではない。
喬さまは、十七の最後の方の首を落したのち、世に隠れて、再びあの奥
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