たちと斬り結んでいるのだ」
 車之助も、負けていない。負けてはいられない。現に、いま眼前に、喬之助がいるのだから……。
「何をいうとは何だ! お手前は夢でも見ているのであろう。喬之助はここにいるぞ。みんなこっちへ来い。一ぺんに遣《や》っつけて終おう!」
「馬鹿を申せ。貴様こそ夢を見ているのじゃろう。喬之助はこっちにおる。ほらほら、彦十郎を相手に刃を合わせておる。みんなこっちへ来いッ! 一|遍《ぺん》に掛って遣っつけてしまおう」
 同じことを言って叫び合いながら、二手に分れて乱闘に移ったのだが、こうなると、ふたり一緒にこの長岡頼母の屋敷へ斬り込んでいる神尾喬之助と茨右近、どっちが喬之助でどっちが右近だか、見たところ全く同じなのだから、作者にもちょっと区別がつかない。

      六

 その、作者にもちょっと区別のつかない烏羽玉《うばたま》の闇黒《やみ》……。
 夜だ。
 神田だ。帯屋小路だ。人影だ。人影は、女だ。女は、下谷黒門町壁辰の娘、お妙だった。
 そのお妙が……。
 闇黒《やみ》だった。
 周囲も闇黒だったし、心も闇黒だった。心のやみ、若い女の心の闇黒――と言えば、それは、恋以
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