で来る! と見せた右近、スッと退ったかと思うと、ピタリ襖《ふすま》を閉《し》め切《き》ってしまった。襖が右近を呑んだかたち……。
同時に、一同のうしろの、先刻《さっき》喬之助の消えた障子がサラリとあいたから、野分《のわき》に吹かれた秋草のように、一同が、そっちをふり返ると、今度はこっちに立っている……喬之助が。
しかも、満面《まんめん》に不敵な笑みをたたえて、挑むが如き剣尖《けんさき》を躍動させているから、今はもう不思議だなぞと首を傾《かし》げてはいられない。カッ! と怒りを発した源助町の天童利根太郎が、
「ウヌ! 愚弄《ぐろう》致すかッ!」
真っ先に打ち込むのを合図のように、バラバラバラッと縁側に雪崩出《なだれで》ると、いまここにいた喬之助の姿が見えないのだ。
「ヤーッ! どこへ行った――」
「いずくへ参った?」
「拙者はいま、眼のまえにあの顔を見て、体当りをくれてやろうと思いおったところだが……」
「喬之助とて、怪神の類ではあるまい。嘲弄致すにもほどがある」
連中はプリプリして、抜刀を引っ提げながら手分けしてウロウロそこらを探し廻っていると、
「居る、いる! ここにいるぞ」
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