まア、お上り」
長庵は火打ちを捜《さが》して、そこらをガサガサ撫で廻している。
五
ガサガサ畳を撫で廻すような音を立てて、一同は、剣を取って群《むら》がり立ったが、しかし、大いに不思議である。
出て行った喬之助が、すぐまた、まるで離れたところからはいって来る。
が、これは、先の出て行った喬之助が真個《ほんと》の喬之助なら、あとの、はいって来たほうの喬之助は、ベツの喬之助――別の喬之助てのも変だが、つまり、神田帯屋小路の喧嘩屋先生、茨右近にきまっているのだが、番士達も源助町も、こういうからくり[#「からくり」に傍点]はすこしも知らないのだし、それに、顔形《かおかたち》は勿論、表情から着付《きつ》けから、刀まで同じなのだから、とっさに喬之助が、身をひる返して、その二十畳もあろう広間の反対側から現れたものとのみ思い込み、どうも神変不可思議《しんぺんふかしぎ》なやつだと内心舌を捲きながら、一同、それぞれ剣に弾《はず》みをくれて、一挙にこの茨右近を屠《ほふ》り[#「屠《ほふ》り」は底本では「屠《ほう》り」]去るべく、一団となって襲い掛ろうとすると、敷居を踏み切って斬り込ん
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