った喬之助の上半身だ。ぱアッ! 片膝が前へ出たと見えたとき、そして、右手が刀の柄へ行ったと見えた刹那《せつな》――。
 喬之助は、抜身《ぬきみ》の一刀を糸で腰に釣って、それに、羽二重《はぶたえ》の単羽織《ひとえばおり》をフワリと掛け、刀身をすっかり隠して、鞘《さや》に納まっている如く見せかけていたのだ。それが今、手が柄に掛ると同瞬《どうしゅん》、そのまま撥《は》ね上げればいいのだ。刀は、みずから糸を断ち、羽織の裾《すそ》を潜って、眼前に躍り出る。その刀身に、スウーッ! と血糊が走って……虚心流《きょしんりゅう》竹輪切《ちくわぎ》りの一剣だ。
 今まで何か饒舌《しゃべ》って動いていた甚八の首が、宙に弧《こ》を描いてドサッ、畳を打った。
「五番首――笠間甚八殿」
 喬之助は、うめいた。静かに立ち上っていた。切り落したような沈黙だ。その沈黙の中で、喬之助は、血を引いた抜刀を片手に、ソロリ、ソロリと退って、障子に手をかけて縁側へ出ようとした。
 それで初めてわれに返ったように気のついた番士一統と源助町の勢である。池上新六郎、山路重之進、大矢内修理、比企一隆斎、鏡丹波らを先頭に、抜き連《つ》れて
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