け、ついに大事……あの刃傷《にんじょう》とこの騒動を捲き起すに到ったのだ。
 自分にも、責任がある。今となって、長岡頼母はそう思う。
 が、責任はあっても、それとこれとは違う。一番首、二番首、三番首、四番首――大迫玄蕃殿、浅香慶之助殿、猪股小膳殿、松原源兵衛殿……そして、この、吹きまくる大暴風雨のような恐慌《きょうこう》の最中に、又してもこの脅威挑戦《きょういちょうせん》――忌中だが、こんどはじぶんの前に現れたのだ。
 忌中、とは何だ?
 生きている、死人だというのかッ!
 五番首は、この長岡頼母だというのかッ!
 何を! 四番首までは知らぬこと、五番目のこの首には、生憎《あいにく》と、いささか筋金が入っているのだ。神尾喬之助、如何に豪剣なりといえども、よも鬼神羅刹《きじんらせつ》の類《たぐい》に化した訳ではあるまい。そう容易《やすやす》とこの首を渡しはしないのだ。来るがよい! 面白い! 来いッ……。
 と、心中に叫び揚げて、絡《から》むような恐怖を払いすてた長岡頼母である。別室には、二十余名の同僚も集っているのだ。ナアニ――! と、急に平素の豪快な頼母に復《かえ》ったかれ、
「いつ書
前へ 次へ
全308ページ中219ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング