つろ》ぎ出して、急にそこここに話声も起り、中断されていた喬之助いじめをまたはじめようとそっちのほうを見ると、もう皆頭を上げているのに、喬之助だけは、まだ平蜘蛛《ひらぐも》のように、畳に手をついている。
眼ひき袖引きして、一同は喬之助を取り囲んだ。
箭作彦十郎が、へんにねっとり[#「ねっとり」に傍点]した口調で、言ったのだった。
「神尾氏、居眠ってござるかの? あははは、その初夢に拙者もあやかりたいほどじゃが、ここは殿中、さまで疲労しておらるるなら、悪いことは言わぬ。下城《さが》って御休息なされい」
そうだ、あの時。
「疲労?」と、叫ぶように頓狂《とんきょう》な声を揚げて乗り出したのは、この自分だった。「疲労か、疲労はよかったな。いかさま、園絵どのと番《つがい》の蝶では、如何《いか》な神尾氏も疲労されるであろうよ」
下卑《げび》た言い草だった。二、三の者は笑い声を立てたが、戸部近江は、明白《あきらか》に厭な顔をした。一層憎悪に燃えるように突っ起ったまま、喬之助を見下ろしていたっけ……。
あれが、近江の胸底にある喬之助への嫉妬を掻き立てて、ああ執拗に喬之助を玩弄《がんろう》しつづ
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